沖縄デジタルアーカイブの契約条件について

映文連から沖縄県への質問状と沖縄県からの回答

業務委員会・著作権部会

はじめに

先般(2002年7月~8月)、映文連は「沖縄デジタルアーカイブ整備事業」(注ⅰ)の契約条件について、沖縄県に対し質問状を送付するとともに、関係省庁に働きかけを行いました。

これは、同事業に応募したコンソーシアムに関係する複数の製作会社から「著作権法の精神を公的機関が遵守するよう沖縄県および関係各省庁に対し、文書等で申し入れをしてほしい」という要請を受けての行動でした。
著作権部会では、沖縄県が出した「公募要領」などを仔細に検討した結果、公正であるべき契約の精神に反すると思える原則的な点に着目して、質問状を作成し、理事会における慎重な検討を経て、沖縄県に送付しました。

ここで公開するのは、上記の質問状と、沖縄県からの回答書、それに対する当連盟の返書です。

しかし、この間、現地沖縄では、同事業に採択された32コンソーシアムのうち約1/4のコンソーシアムが、県との契約を「中断」し、契約条件の改善を求めていた、という事情がありました。「沖縄デジタルアーカイブ推進協議会」(注ⅱ)の名で、当連盟とほぼ同時に発せられた質問状(7月30日付)の内容は、採択後の制作費削減、仕様変更、著作権など多岐にわたるもので、問題は単に著作権にとどまらず、それを包含する「取引・契約の公正性」を問うものとなっていました。

当連盟が関係各省庁に働きかけを行う過程で、「推進協議会」と当連盟とが、直接、連携した行動をとるには至りませんでしたが、契約当事者ではない当連盟が、この問題で一石を投ずることで、多少とも製作者に望ましい契約条件の改善に役だったとすれば、それは何よりも当事者であるコンソーシアムの方々の、粘り強い交渉努力があったためです。

映文連としては、この種の発言や行動は、ただちに有効か無効かを問う性格のものではなく、発言や行動を続けることにこそ意味がある、と考えています。
今回公開する一連の書簡のなかで提起された課題(マルチメディア・ブロードバンド時代にふさわしい商慣習の確立)が、デジタルアーカイブ事業や映像コンテンツ制作に携わる方々、また、広く映像コンテンツの発注者や利用者の方々に、貴重な先例として受けとめていただければ幸いです。

注)

  1. 沖縄県が、県内の情報関連産業、コンテンツ制作人材の育成等を飛躍的に発展させるとともに、観光産業の振興ため、沖縄の風土・文化を世界に発信する、最高水準のデジタルアーカイブを構築することを目的とする。総事業費は、15億円(国10億、県5億)。2002年5月にコンテンツ制作実施者の公募開始、約200件の応募があり、7月中旬に32件のコンソーシアム(幹事企業は沖縄の企業であることが条件)採択が発表された。(沖縄県庁ホームページへ)
  2. 2002年5月17日、沖縄県内のIT関連企業、映像・コンテンツ制作会社約50の企業や個人が参加して発足。設立目的に、県が行う「デジタルアーカイブ整備事業」に沿って、民間の立場から「必要な人材育成および普及啓発、調査研究、情報の共有化」を図ることを掲げ、関係する企業や団体、個人が、業界の垣根を越えて連携し、自由な意見交換ができる場を作りたい、としている。代表幹事には、沖縄電力取締役の玉城 健 氏が就任。(『沖縄タイムス』『琉球新報』5月18日付参照)

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沖縄デジタルアーカイブ整備事業の契約条件について【回答】 PDF

沖縄県への返書

当連盟は、9月2日に上記の回答書を受領。更新された制作委託契約書などを検討し、以下の面で契約条件に改善が認められたことを確認。沖縄県への返書を作成し、送付しました。
(なお、沖縄県は、「推進協議会」に対しても、別途、回答書を送っています。<8月29日付>)

  • 契約書(案)の全面更新。
  • 映文連の質問状で問題ありとした、二次利用に関わる条文の全文削除。
  • 未使用素材の納入、権利譲渡条件の緩和。
  • 支払い条件の緩和(納入・合格後→前金払いもあり得る)。
  • 制作費「一律2割削減」の撤回。
  • 仕様フォーマットの引き上げを一律に強制しない。
  • (著作権は「買い取り」で、制作費用に「著作権譲渡料」含めて算定。制作費と著作権譲渡料を分けた形での制作発注慣行が、未確立なため。)

沖縄デジタルアーカイブ整備事業の契約条件について【返信】 PDF