公正な著作権契約のために

近年、情報関連技術は、その処理や伝達の手段を飛躍的に進歩させています。とりわけ映像関連技術の進歩は、デジタル技術やブロードバンドの実現による通信インフラの急速な普及と発達にみられるように、きわ立ったものがあります。そのため、映像の複製・改編・送信といった行為が、きわめて容易にできるようになりました。
こうした状況は、さまざまな広報映像製作(企業や官公庁からの受注製作)の分野にも顕著な影響を与えており、最近これに関連して、著作権契約に関する問い合わせや確認が、映文連事務局に多数寄せられています。
そこで、以下のページでは、デジタル・エイジを背景に、映像製作者(プロダクション)が映像発注者の皆様との良好な「契約慣習」をつくるために必要と考える基本的な考え方を示しました。なお、Q&Aのページもありますので、そちらもご参照いただければ幸いです。

映像著作物の著作者は、製作者(プロダクション)であり、著作権は原初的に製作者(プロダクション)に発生する。
本来、映像(映画、ビデオ、およびそれに類似する効果をもつもの)の著作権は、その映像の著作・創作行為に「発意と責任を有する者」すなわち製作者(プロダクション)に帰属することになっています(著作権法、第29条および第2条10項参照)。さらに著作者は、著作権(財産権としての)とは別に、著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)を「享有する」(生まれながらに持っている)ことも規定されています(第17条)。
このことは、発注者が製作者(プロダクション)に映像の製作を委託する場合、たとえ製作費全額をその発注者が拠出していたとしても、その映像の著作権は、原初的に製作者に発生することが著作権法上の原則だということです。法的には、契約書上「甲=発注者に帰属する」と条件が示された場合であっても、映像が完成した段階で著作権が製作者(プロダクション)に帰属していることになります。
契約の基本精神は<共存・共栄>である。
しかし、広報映像の場合、その製作意図や利用目的を考慮すれば、製作者(プロダクション)は、完成した映像著作物を発注者が円滑に利用できるよう配慮するのは当然のことです。そこで、製作者(プロダクション)は、発注者(クライアント)と対等な立場で事前に協議を行い、著作権の行使について法律の定める範囲で「契約」を取り結ぶことが望ましいと考えます。
ところで、「契約」とは、本来自由な意思をもった当事者どうしの合意によって成り立つものです。その点、現状のとりわけ官庁や地方自治体等との契約例に、製作者(プロダクション)が明らかに著作者であるにもかかわらず、説明会や仕様書の段階から著作権を「甲=発注者に帰属する」ものと条件づける例がしばしばみられることは、非常に遺憾なことです。
「甲に帰属する」は、上に述べた原則に照らせば「乙から甲への無償による著作権全部譲渡」を意味するばかりでなく、契約上正確さを欠く記述です。著作権(財産権)は契約によって初めて移動するのですから注)、それを条件とするのであれば、その旨(乙から甲への譲渡)が明記されるべきです。(通常の委託-受注の関係であれば、著作権は明らかに製作者の側に発生していますから、直接製作費とは別に、著作権の譲渡に係る「対価」の交渉は、当然あってしかるべきだと考えます。)
「コンテンツ促進法」施行の意義。
平成16年、「コンテンツ促進法」の施行により、コンテンツ産業の振興のため、またコンテンツを有効に流通させるために国が必ずしも知的財産権を占有する(国に「帰属」させる)必要はないことが明記されました。(第25条)いわゆる「バイドール」規定です。この規定には、製作者の側にインセンティブを与えることにより、より優れたコンテンツの調達が可能になる、という考え方も反映されています。「コンテンツ促進法」は、製作者および発注者である国、地方公共団体が、それぞれ責務を果たし、コンテンツの創造、保護と活用の促進を図ることを謳っています。発注者の皆様には、この立法の精神を尊重していただくようお願いいたします。
「ワンソース・マルチユース」時代に相応しい契約慣習づくりに ご協力下さい。
現在、ビデオ等のパッケージ・メディアにかわり、完成作品の「ワン・ソース、マルチ・ユース」的な利用形態(製作者には完成作品のデジタルデータの納入のみを求め、CS送信、オンデマンドによるLAN配信、ストリーミング等、発注者が自由に利用する)が主流になりつつあります。しかし、この形態についても、著作権法の原則に照らせば、各々の利用行為が行われる毎に、製作者(プロダクション)の「複製権」が及ぶ、という問題を是非ご理解いただきたいと思います。また、完成作品が「マルチ」に利用されるようになればなるほど、著作権処理や追加報酬のコストも増加します。この問題の解決のためには、発注者の皆様との間で対価についてのルールづくりが避けて通れません。
新しい時代には、旧い時代とは異なった新しい契約慣習が必要です。製作者(プロダクション)との契約は、<共存・共栄>の基本精神にのっとり、双方の利益を尊重し、社会的にも公正な契約内容としていただきたいと思います。
実際の契約方法については、事実上の「権利分有」から「買い取り」に至るまで幅があり得ますが、当連盟では、「映像製作契約書(「著作権契約ハンドブック」に掲載)」を用意し、製作者(プロダクション)の立場にご理解をいただきながら、発注者の皆様に、完成した映像著作物の円滑な利用がはかれるよう配慮しております。Q&Aのページでも若干ふれておりますが、なお詳しくは、会員プロダクション、もしくは映文連事務局にお尋ね下さい。
注)従来、国有財産法の規定から、国が製作費を拠出した委託業務の成果物にかかる著作権は、「国に帰属する」とされることが慣例でしたが、「コンテンツ促進法」の施行により、製作者の側に発生した著作権は、「契約によらなければ、譲渡されない」ことが明確になりました。著作権法と国有財産法との間で相容れなかった問題が整序されたことになります。

事務局へのお問い合わせは、TEL:03-3662-0236 FAX:03-3662-0238 まで。
事務局長:中嶋 清美