ドキュメンタリー映像集成(第1期)

ドキュメンタリー映像集成-文化・記録映画でよむ現代日本

戦後60年を期に会員等が保有する作品の膨大な業績の中から、多面的な切り口による短編ドキュメンタリーで構成された現代日本の歩みを通観できるDVD シリーズを目指し、㈱紀伊國屋書店との共同企画で「ドキュメンタリー映像集成 文化・ 記録映画でよむ現代日本」全30巻が始まりました。

第1期は、1930年代から敗戦までの「文化映画」作品、占領時代を中心に民主主義思想の普及のために製作された「教育映画」、戦後早くも国際的評価を獲得した「科学映画」とその後の展開を収録しました。(2006年2月発売)


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第1期 戦前から戦後へ/民主主義と科学映像の系譜(全12巻 DVD)

シリーズ1:帝国の現実と社会-「文化映画」の時代

01 中国大陸の戦火

開拓突撃隊-鉄道自警村移民記録 (満鉄映画製作所)1937年 33分
編集・演出:高橋秀一
日本の満州侵略には、世界恐慌の影響で深刻な窮乏に陥った農村が抱える<過剰人口>を移民によって<解消>するという目的もあった。プロパガンダの目的で製作された映画だが、当時の日本人が(特に農民が)植民地「満州」をどのような眼で見るよう促されていたかを知る、貴重な資料である。
支那事変後方記録・上海 (東宝文化映画部)1938年 77分
製作:米澤秋吉、撮影:三木茂、編集:亀井文夫、現地録音:藤井慎二、語り:松井翠声
1937年の第2次上海事変の直後に、三木茂が中国で取材したフィルムを亀井文夫が編集。戦意高揚を目的として製作されながら、戦場の情景の即物的描写(三木)と巧みな編集(亀井)によって、単なる戦場の記録を超え、戦争の空しさをにじませ、反戦の意図を秘めた傑作となった。


02 暮らし総力戦へ 

雪国 (芸術映画社)1939年 38分
製作:大村英之助、演出:石本統吉、撮影:橋本竜雄、井上莞、竜神孝正、黒瀬進、成田勉
山形県新庄を中心に、足かけ3年のロケ。豪雪地方の農民が雪との闘いに明け暮れる生活を徹底して描くことを目指した。農村の生活改善運動なども記録した秀作。英国ドキュメンタリー運動の影響を受けた、ソーシャル・ドキュメントの嚆矢でもある。
機関車C57 (芸術映画社)1941年 44分
製作:大村英之助、演出:今泉善珠、脚本:松本秀臣、撮影:大小島嘉一
最新鋭機関車C57の車両点検から出発までの構成のなかに、機関助士(所謂釜炊き)の猛烈な訓練生活と驀進する機関車のダイナミズムを描く。しかし、この作品を優れたドキュメンタリーと観るか、「国民生活総動員」映画のはしりと観るか、その評価は微妙に分かれるだろう。
或る保姆の記録 (芸術映画社)1942年 35分
製作:大村英之助、構成:厚木たか、演出:水木荘也、撮影:橋本龍雄、竜神孝正、音楽:深井史郎
英国ドキュメンタリー運動を紹介した厚木たかが、戦時下の、働く母と子どもたちの生活を、東京大井の労働者街にあった私立保育所を舞台に見つめたソーシャル・ドキュメント。厚木は戦時教育的内容を加えるよう当局から圧力を受けながらも、勇気をもってそれを拒んだ。
わたし達はこんなに働いている (朝日映画社)1945年 18分
構成:厚木たか、演出:水木荘也、撮影:小西昌三
敗色の濃厚になった時期に海軍衣料廠の女子挺身隊を取材。「私たちがこんなに働いているのに、なぜサイパン島では日本軍が玉砕してしまったのだろう」と肩を寄せ合って泣いたという、少女たちの凄まじいまでの労働を描く。戦争末期の狂気とも言える意識の倒錯が、そのままカメラに捉えられている。


03 アジアのなかの日本文化

舞楽 (国際文化振興会) 1937年 11分
撮影:三木茂
財団法人 国際文化振興会は、1934年、日本が満州事変~国際連盟の脱退と国際的に孤立を深めるなかで、日本文化の海外広報を目的に設立された。次第に国策を強く反映するようになっていったが、初期には、少数ながら、戦後にも通用する優れた作品が製作されていたことは注目に値する。
人形製作 (国際文化振興会)1937年 17分
日本人形には、機械生産ではない職人の手作りの分業によって、繊細な味わいがうまれる。市松人形に、生命が吹き込まれる工程を丹念に記録した。この映画の製作について詳細は不明だが、名取洋之助が主催する「日本工房」が関与していたと思われる。
娘々廟会(にゃんにゃんみゃおほい) (満鉄映画製作所)1939年 20分
編集、構成:芥川光蔵、撮影:藤井静、語り:中村伸郎
満州大石橋の娘々廟に詣でる農民の習俗、春の祭りの賑わいを描いた作品。アーノルド・ファンク(『新しき土』1936年、日独合作映画の監督)から直に譲り受けたという、芥川光蔵のズームレンズ使用は、当時、画期的な技術だった。しかし、芥川のまなざしは、満州農民の生活の内側にまで届いていたのだろうか?
室生寺 平安時代初期の美術 (東宝文化映画部)1940年 13分
製作:加納竜一、演出:中村敏郎、撮影:玉井正夫、企画:文部省
女人高野と呼ばれる室生寺の繊細なたたずまい、仏像の美しさをモダンなカメラワークによって見事に捉えた秀作。その美の世界は、巻頭の「皇紀二千六百年・・・」というナレーションがなければ、しばし戦争を忘れさせるほど。
法隆寺 (日本映画社)1943年 37分
製作:加納竜一、演出:下村健二、撮影:吉野馨治、企画:文部省
焼失前の金堂の壁画が捉えられているなど、貴重なシーンもあり、かつ力作だが、戦争も末期に近い1943年当時には、皇国史観の下、渡来文化である仏教文化を紹介するには、聖徳太子の威徳をもって包まなければならなかった。1940年の「室生寺」と対照させると、時代の厳しさが一層よく理解できる。
小林一茶・信濃風土記より (東宝文化映画部)1941年 27分
演出:亀井文夫、撮影:白井茂、録音:酒井栄三、音楽:大木正夫、語り:徳川夢声
亀井文夫が、俳人一茶の句を読み解きながら厳しい信州の生活風俗を描く。痛烈な社会批判が込められたこの作品を、文部省は「文化映画」として認定しなかった。1941年になると、時代の空気はいよいよ切迫感を強め、単なる「文化映画」の製作は、いよいよ困難になって来る。


04 科学と技術

黒い太陽 (朝日新聞社)1936年 19分
光学装置:五藤光学研究所、撮影・編集:三木茂、林田重男
1936年6月19日に、北海道で皆既日食が観測された。朝日新聞は、五藤光学研究所の協力を得、1200ミリの大望遠鏡、フィルターホルダーを備えた日食撮影システムを考案し、その全容をほぼ完全に撮影した。日本において劇場公開された本格的な科学映画として最初のものとなった。
雪の結晶 (東宝文化映画部)1939年+1953年 20分
演出・撮影:吉野馨治
「雪は天から送られた手紙である」という言葉を遺した “雪の博士”中谷宇吉郎の指導により、世界で始めて成功した雪の結晶の人工創製(1936年)を映画化した科学映画の古典。残存する英語版6分に、戦後岩波映画で新たに撮影したバージョンを補足。
或日の干潟 (理研科学映画)1940年 17分
製作:渡邊俊平、演出:下村兼史、撮影:佐野時雄
千葉県行徳海岸や九州有明湾に2年がかりのロケをし、望遠レンズを駆使して干潟の魚介類や鳥などを丹念にスケッチ。食物連鎖の観点もいれて、日本の生物生態記録映画の古典となった。監督の下村兼史 (1903~1967)は、当時、日本野鳥学会の内田清之介博士の指導で野鳥の生態写真を撮り続けていた。
満州大豆 (満鉄映画製作所)1938年 22分
満州で収穫される大豆の生産高は、当時世界の50%のシェアを占めていた。盛夏に収穫、収穫された大豆を厳冬期に供出する満州独特の風物に始まり、この大豆を原料に生産される植物油の製造法、粕を原料とする人造バターなどの生産を描く。植民地「満州国」の経済の一端が記録された、貴重なフィルム。
爆風と弾片 (理研科学映画)1944年 45分
演出:佐々木富美男、撮影:古泉勝男、竹内光雄、構成:岩掘喜久雄、音楽:諸井三郎
映画は、爆弾の実物を見せながら、250キロ、500キロ、1トンの順で、その爆風の威力、弾片の飛散による建築物の被害、殺傷能力を実物大の実験によって解説してゆく。退避壕は、どのような形状が理想的かなど、画面からは切迫感が伝わって来る。



シリーズ2:占領と、民主主義の新しい「教育映画」へ

05 復興へ向かう生産と労働

炭鉱 (日本映画社)1947年 33分
製作:加納竜一、演出:伊東寿恵男、柳沢寿男、撮影:川口和男、橋本正
終戦直後、経済はなかなか復興の軌道に乗れなかった。政府は、復興のための資金や資材を、石炭や鉄鋼などの重要産業に「傾斜的に投入する」政策をとった(傾斜生産)。北海道美唄炭鉱に長期ロケを行なったこの作品は、当時、炭鉱国家管理法案審議中の衆議院で議員全員が観覧したという。
海に生きる (全日本海員組合・日本映画社)1949年 33分
製作:中村正、演出:柳沢寿男、樺島精一、撮影:林田重男、企画:労働組合映画協議会
北九州の漁港を基地に活躍する遠洋底曳漁船の乗組員の生活を躍動的にドキュメントした力作。一対をなす2艘の漁船に、撮影班は3艘目の船をチャーターして臨んだ。食糧難の当時、海の資源は国民の生命を守るために欠かせなかった。労働組合が、自身で製作した映画としても、画期的な作品となった。
ぬかものがたり (日本映画社)1949年 17分
製作:中村正、脚本:岩佐氏寿、演出・撮影:栗林実、音楽:三木鶏郎、
後援:経済安定本部、商工省、農林省、油糧配給公団
経済安定本部がスポンサーとなった『ぬかものがたり』は、農家に米ぬかの再資源化とその有効活用法を説く。当時NHKラジオ「日曜娯楽版」で絶大な人気を博していた、三木鶏郎とその「冗談音楽」グループが演出に加わり、一種の音楽映画に仕上げている。戦後初期の大衆文化を生き生きと捉えた貴重なフィルム。
青果市場 (科学映画社)1950年 18分
脚本・演出:岩堀喜久雄
『社会科教材映画大系』(後述*参照)のひとつ。庶民の消費生活において、青果市場がどのような役割を果たしているか。単なる流通機構の説明に終わらせず、生産者である農家の立場、仲買業者と町の八百屋、主婦の立場を、それぞれ描き、問題を投げかける。
流れ作業 (東宝教育映画部)1950年 18分
製作:平松幸彦、演出:西沢豪
本作も『社会科教材映画大系』のひとつ。生産の近代化における一つの表徴として、大量生産をささえる「流れ作業」を例にとりあげた。愛知県のトヨタ自動車工場に取材。流れ作業の本質を、歴史的・段階的説明を避け、端的に時間の問題=生産性の観点から捉えて、その社会的意義を理解できるよう試みた。


06 農村の現実・自立する女性たち

日本の稲作 (全国農村映画協会)1954年 50分
脚本:加納竜一、演出:太田仁吉、樺島清一、撮影:鈴木喜代治、企画:農林省
GHQと日本政府による、農地改革によって、大量の自作農が創出された農村を舞台に、『日本の稲作』は、苗床づくりから刈入れ、田の冬備えまでを克明なカメラ・アイで描いてゆく。米づくりのプロセスが、これほどの慈しみをもって描かれたのは、この作品の以前にも、以後にもなかった。
ひとりの母の記録 (岩波映画製作所)1955年 39分
製作:小口禎三、脚本:岩佐氏寿、演出:京極高英、撮影:加藤和三
信州伊那谷の養蚕農家、ヨメであり母であり、家計の維持のために早朝から深夜まで働きづめに働かなければならない一農村女性の姿を中心に描く。息子や娘は、土木工事や工場に働きに出なければならない。家族離散の厳しい現実と、農村経済の問題を追求する。
町の政治 勉強するお母さん (岩波映画製作所)1957年 30分
製作:小口禎三、脚本・演出:時枝俊江、撮影:藤瀬季彦
女性の地位の向上も、戦前と戦後を分かつ大きな変化であったろう。『町の政治』は、東京、国立町(現在の国立市)の行政を変えた女性たちの記録である。現在にいたる市民によるまちづくり運動の端緒を作り上げた女性たちを活き活きと記録している。


07 子どもたちと民主主義 

こども議会 (東宝教育映画部)1947年 18分
製作:米山彊、脚本・演出:丸山章治、撮影:完倉泰一
まだ戦災の焼け跡があちこちに残る東京、下町の小学校。雨が降ると、傘や防空頭巾を持たない子供たちは登校できない。どうすれば、皆が学校に通うことができるだろうか?生活の切実な要求を民主主義の精神とルールによって解決させることを描いた啓発映画。青空の下、活発な討論が、新しい時代の息吹を伝える。
はえのいない町 (岩波映画製作所)1951年 12分
脚本:羽仁進ほか、演出:村治夫、吉野馨治、撮影:吉野馨治
お昼の弁当にハエがたかる。ハエは学校のどこからやってくるのだろう?ハエの生態の観察から始まった子どもたちの活動は、やがて学校内の衛生を改善させ、さらに、その問題関心は町へ、社会へと拡がってゆく。子どもたちの思考プロセスを自然に導いてゆく卓抜なシナリオは、羽仁進が担当。戦後初期教育映画の名作。
月の輪古墳 (月の輪映画製作委員会)1954年 29分
製作:管家陳彦、構成:荒井英郎、杉山正美、吉見泰、撮影:竜神孝正、川村浩士、語り:丸山章治
月の輪古墳は、1953年に、岡山大学の研究者が指導しながら、延べ1万人に及ぶ地元の人々が発掘調査に加わり、大衆的な古代史・考古学の生きた体験学習が行なわれたことで一躍有名になった。戦後記録映画史上、ひとつのエポックを画する作品。
教室の子供たち 学習指導への道 (岩波映画製作所)1954年 29分
製作:小口禎三、演出・脚本:羽仁進、撮影:小村静夫、企画:文部省
羽仁進の名を一躍有名にした戦後ドキュメンタリー映画の傑作。あらかじめ書かれたシナリオに沿ってではなく、カメラが記録した素材を吟味し、シナリオを組み替えてゆくという制作手法も斬新なものであった。その清新なリアリズムは記録映画の方法論に一石を投じた。
九十九里浜の子供たち (東映教育映画部)1956年 32分
脚本:岩佐氏寿、演出:豊田敬太、撮影:浦島進
漁村の中学校における長期欠席生徒への対策をテーマとしたドキュメンタリー。教師たちは、親を説得し、チームを組んで教室で子守りを引き受けながら、懸命に生徒たちを学校へ来させようとする。高度経済成長が始まる一方で、農山漁村の子どもたちが置き去りにされて、6・3制の義務教育についてゆけない現実を浮き彫りにする。



シリーズ3:戦後科学映像の系譜

08 人体を探るミクロの眼

ミクロの世界 (東京シネマ)1958年 30分
製作:岡田桑三、脚本:吉見泰、演出:大沼鉄郎、杉山正美、撮影:小林米作、編集:伊勢長之助、
音楽:松平頼則、企画:中外製薬
20世紀の半ばに抗生物質が発見され、薬剤として使用されるまで、結核菌とのたたかいは、人類にとって大きなテーマあった。結核菌とたたかう食細胞、貪食された結核菌はどうなるのか、微速度顕微鏡撮影の技術で極微の未知の世界を探究し、その死闘のはげしさを観察、カラーフィルムに記録した。
パルスの世界 (東京シネマ)1962年 29分
製作:岡田桑三、脚本:吉見泰、演出・撮影:小林米作ほか、音楽:一柳慧、企画:松下電器産業
人間の頭脳の働きは、かつて人間にだけしかできないものと考えられていた。しかし、こうした生体の心身における諸活動を解明するために、エレクトロニクスがモデルとして役立つことが次第に明らかになってきた。情報を伝え、情報を処理するこのパルスの世界を、神経細胞の働きを観察することにより、探ってゆく。
生命の流れ 血液を探る (電通映画社)1968年 26分
製作:西尾豊、八幡省三、演出:樋口源一郎、撮影:鈴木喜代治、企画:第一製薬
生体内をくまなく流れる血液、それはどのような機能を担っているのか。赤血球の肺での酸素交換、酸素を腸や肝臓に運ぶ営み。また血小板の止血作用、白血球の食菌作用、これらの血球が骨髄で生成される様子などを顕微鏡下の世界で描く。血流とはまさに”生命の流れ”なのだと実感されてくる。
生命 哺乳動物発生の記録 (シネサイエンス)1970年 26分
製作:林六郎、脚本:渡辺正己、演出・撮影:武田純一郎、企画:帝国臓器製薬
世界ではじめて、哺乳動物発生の映画化に挑戦した力作。母体中の生命誕生のドラマを、当時の研究成果の水準を可能な限り活かして追跡した。排卵の瞬間、子宮に抱かれた卵などをファイバースコープで撮影。卵割の様子や卵のなかで臓器形成が行なわれるようすなど、観る者を驚かせる映像を多数収録。
The BONEⅡ (ヨネプロダクション)1986年 21分
製作:小林米作、脚本:船越美枝子、演出・撮影:金子文雄ほか、企画:帝人、藤沢薬品工業
脊椎動物の骨は骨格として身体を支え、カルシウムやリンなどの身体に必要なミネラルを蓄える。そのカルシウムは、細胞分裂、神経の興奮、筋肉の収縮などの生命現象に欠かせない。また、ビタミンDと骨細胞は、骨の吸収と再形成と密接な関係をもち、このように私たちが生きている限り、骨を形成する細胞の営みは休むことがない。



09 霊長類への理解と人間

ニホンザルの自然社会 (三井芸術プロダクション)1954年 21分
製作:三井高孟、脚本:太田仁吉、演出:矢部正男、撮影:鈴木喜代治、企画:文部省
京都大学、宮地伝三郎・今西錦司のグループによって始められたニホンザルの群れの生態、”自然社会”を始めて映画カメラが捉えた。ボスザルを中心とした群れの秩序、母系制に似た親子関係、年齢層とオス・メスに分かれたグループ形成、海水で芋を味付けする”文化”など、その生態をいきいきと記録した。
オランウータンの知恵 (日本映画新社)1960年 38分
製作:堀場伸世、白井茂、脚本:藤原智子、演出:藤原智子、山口須子、撮影:白井茂、坂崎武彦
多摩自然動物公園で飼育されている満3歳のメスのオランウータン”ジプシー”を主人公に、さまざまな知能テストを行い観察した。実験の観察には、心理学者の望月衛氏(千葉大学教授、当時)が解説をつけ、知能だけではなく人間の子どもにも似た感情のはたらきにも注目する。
アリサ-ヒトから人間への記録 (青銅プロダクション・共同映画)1986年 78分
製作:小島義史、野原嘉一郎、脚本:ふじたあさや、演出:山崎定人、撮影:山本駿
ひとりの女の子の生後6ヶ月から6歳11ヶ月まで、7年の成長を追ったドキュメンタリー。家庭でも保育園でも一切、文字の読み書きを教えないことを方針のもと、”アリサ”と名づけられた女の子は、発育に応じて、溢れるような意欲と体力、瑞々しい感性と創造力、仲間を思いやる優しい心を獲得してゆく。


10 生命誌・観察の旅

女王蜂の神秘 (桜映画社)1962年 33分
製作:村山英治、脚本:内木芳夫、演出:樋口源一郎、撮影:小林一夫、音楽:間宮芳生、企画:中外製薬
何万というミツバチが、ただ1匹の女王蜂を中心に、1個の生物を形作る細胞のように連携し社会をつくる。ミツバチの情報伝達である特異なダンス、働き蜂の分業、女王蜂が死んだときの世代交代にローヤルゼリーが果たす不思議な役割など、ミツバチ社会の神秘を明らかにする。
自然界の釣り合い 動物の数は何できまるか (東映教育映画部)1972年 24分
企画:布村建、脚本・演出・撮影:川崎龍彦
アメリカシロヒトリの10,000個の卵。その産み付けられた卵のうち何%が無事成虫になるか。天敵が果たす役割、自然界の微妙なバランスが、そこに働いていることを、克明な追跡調査によって理解させる。
ひなにとって親とは何か (学習研究社)1974年 20分
製作:原正次、石川茂樹、脚本・演出:江藤征治、撮影:秦吏志
人工孵化をしたアヒルのひなを使い、ローレンツ博士の研究で有名になった「すりこみ理論」を実験によって興味深く見せる。
ムーンジェリー ミズクラゲのライフサイクル(東京シネマ新社)1977年 33分
製作:岡田桑三、脚本・演出:岡田一男、撮影:谷口常也
世界中の海で見られ、世代交番(世代によって生殖方法が変わることを言う)の典型として知られるミズクラゲの有性生殖期(クラゲ)と無性生殖期(ポリプ)、浮遊生活と付着生活のくりかえしを顕微鏡、接写の微速度撮影で克明に記録。フィルムに記録された新発見も含む。
大は小を兼ねるといえども (読売映像)1997年 21分
製作:古田誠宏、脚本:牧衷、演出・撮影:中神賢史、企画:科学技術振興事業団
河内啓二氏の「微小流動プロジェクト」研究の映像化。タンポポの種子からトンボやチョウ、大は、ジャンボジェットにいたる飛行のメカニズムを追求する。トンボや蝶の風洞を用いた実験や、極小の昆虫アザミウマの飛翔メカニズムを高速カメラで捉えるなど、興味深い映像で紹介する。


11 進化の歴史を追って

特別天然記念物・ライチョウ (日本シネセル)1967年 32分
製作:静永純一、演出:下村兼史、脚本・編集:樺島清一、撮影:伊藤三千雄、赤松威喜、村瀬昭夫
企画:文化財保護委員会
高山の環境に適応して進化した氷河時代の生き残りであるライチョウの生態を日本アルプスの四季を背景に克明に捉える。生物の生態記録映画の古典「或日の干潟」を撮った下村兼史 最後の労作。
種子の中の海 イチョウの精子と植物の生殖進化 (東京シネマ新社)2000年 35分
製作:岡田一男、脚本・演出:鈴木由紀 、撮影:谷口常也
被子植物は精細胞を直接卵に送り込む。原始的なコケ・シダは、雨などを利用して精子を泳がせ受精する。イチョウ・ソテツは、両者を進化的に繋ぐ植物である。地上の緑色植物の祖先に最も近い、単細胞の緑色藻が水中を泳ぎまわる姿から、被子植物の花粉管による受精まで、太古の海の記憶を保ちながら展開する植物の生殖進化を一覧する。
真性粘菌の生活史 (シネドキュメント)1997年 28分
製作・脚本・演出:樋口源一郎、撮影:石井董久
真性粘菌は、生物進化の初期に発生し「変形菌」とも呼ばれている。広義の菌類に分類され、葉緑体を持たず、むしろ動物的な構造と生態を特徴とする。真性粘菌の場合は、バラバラだった粘菌アメーバが融合して、一つの巨大な形を変えた、多核の単細胞である変形体を形成する。真性粘菌の変幻自在、不思議な生活史。
DNAが描くオサムシ新地図 (ドキュメンタリー工房)1998年 38分
製作:加藤和人、脚本・演出:鈴木昭典、撮影:喜田正昭、企画:JT生命誌研究館
オサムシは、日本や世界に広く分布している昆虫だが、飛ぶことが出来ないので行動範囲がせまく、地域によってたくさんのバラエティがある。インターネットを用いて、世界中のオサムシを集め、DNAの塩基配列を分析した。その結果、個体の突然変異による進化という常識的なイメージを覆す新発見を紹介。


12 原子・地球・宇宙-極微から無限大へ

ナノワールドに挑む 電子顕微鏡が探る極微の世界(イメージサイエンス)1988年 26分
製作:大須賀武、脚本・演出:牧口光郎、撮影:坂田祐次、企画:日立製作所
物質をナノ単位、すなわち原子のレベルで観測する電子顕微鏡の発達を描きながら、電子顕微鏡が、単に極微の世界の研究にとどまらず、半導体や超伝導など最先端のテクノロジーの発展に貢献していることを解説。
マグニチュード7.9 地震予知の科学 (岩波映画製作所)1972年 27分
製作:高橋宏暢、脚本・演出:桑野茂、撮影:竹内亮、企画:科学技術庁
プレートテクトニクス理論に基づき、巨大な地震の破壊力は、どのようにして生れるのかを究明する。墓石大の安山岩に1200トンの圧力を加えてみる。凄まじい爆発的な破壊。地震は、地下の岩盤の破壊から起こるが、そのエネルギーはどのように蓄えられるか。関東大震災級の巨大地震への備えと地震予知の科学を説く。
極限の世界 超高圧、超低温、超強磁場 (東京文映)1988年 31分
製作:土屋祥吾、脚本・演出:小川博孝、撮影:松本俊世、企画:東京書籍
人間の生活環境からかけ離れた条件を作り出すと、物質が日常生活では考えられないような、驚くべきふるまいを始める。超高圧化で黒鉛から造られるダイヤモンド。超低温で磁石が浮遊する「マイスナー効果」。世界最強の永久磁石など、地球の中心や宇宙の環境とも関わる極限物性学の一端を紹介する。
X線天文学への道 (岩波映画製作所)1968年 21分
製作:田中清広、脚本:吉原順平、演出:矢部正男、撮影:中山正昭、企画:文部省
東大の天文台と宇宙航空研究所の共同研究は、1966年、さそり座の発するX線が、光学的に観測できるどの星から発せられているのかをつきとめることに成功した。この世界初の成果を紹介し、新しい天文学の姿を浮き彫りにする。
電波で探る宇宙 (イメージサイエンス)1998年 25分
製作:井川良徳、脚本・演出:碓井隆志、撮影:舟橋研二、企画:文部省国立天文台
電波で観測する宇宙像は、可視光線による観測とは全く違っている。この電波を発するものは、実は分子で、真空で何もないと思われがちな宇宙空間には、実は様々な分子が存在していた。さらにこの分子を電波で調べることにより、天体の運動、星の進化までもが観測できるようになった。最新の電波天文学でみる宇宙像を解説。